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春日井市内の蝶の観察と写真、資料を掲載しています。

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アサギマダラ幼虫越冬・羽化観察記録
2021年12月~2022年5月
愛知県春日井市廻間町「築水の森」

(1)「築水の森」の位置と環境
  ①観察地の「築水の森」の位置
  ②「築水の森」のある春日井市東部丘陵
  ③「築水の森」の特徴
  ④「築水の森」のキジョラン

 (2)春日井市でのアサギマダラ
   ①アサギマダラのデータ
   ②春日井市でのアサギマダラの生息状況
   ③春日井市でのアサギマダラの生態写真


(3)「築水の森」でのアサギマダラ幼虫の越冬観察記録
  ①2021年12月25日(土)
  ②2022年1月22日(土)
  ③2022年2月26日(土)
  ④2022年3月9日(水)
  ⑤2022年3月26日(土)
  ⑥2022年3月30日(水)
  ⑦2022年4月12日(火)
  ⑧2022年4月13日(水)
  ⑨2022年4月25日(月)
  ⑩2022年5月10日(火)
  ⑪2022年5月14日(土)
  ⑫2022年5月22日(日)


(4)アサギマダラ幼虫の越冬について
  ①アサギマダラのライフサイクル
  ②アサギマダラの越冬可能範囲
  ③「築水の森」でのアサギマダラの幼虫越冬・羽化
  <参考文献>

(1)「築水の森」の位置と環境
①観察地の「築水の森」の位置
【観察地】愛知県春日井市廻間町の「築水の森」

②「築水の森」のある春日井市東部丘陵
 春日井市東部に位置し、春日井三山といわれる弥勒山(標高437m)・道樹山(標高429m)・大谷山(標高425m)、さらには築水池を中心に豊かな里山里地が残されている。そこに、東海地区特有の自然環境に依存した多様な動植物が生息し、市民の憩いの場ともなっている。自然豊かな森を巡る、散策モデルコースも作られていて、春の山野草、夏の新緑、秋の紅葉と豊かな四季の自然を楽しむことができ、休日ともなると訪れる人も結構増えてきた。

③「築水の森」の特徴
 築水池(明治時代築造のため池)周辺は、主に県有林地(愛知高原国定公園指定)として比較的まとまった半自然(二次林)が残されている。しかし、この丘陵はもともと緑の林が発達していたわけではなく、明治維新後の産業発展に伴い、明治時代中頃までに裸地と化した禿げ山となってしまった。その後、明治時代の終わり頃から治山事業の継続で緑の復旧が図られ、今日に見る山紫水明の景となっている。また、シデコブシやその他絶滅が危惧されている貴重な動植物も生育している貴重な場所ともなってきた。 

 〇築水の森の地図

④「築水の森」のキジョラン
 「築水の森」の野草園の近くに、1本だけキジョランがありますが、人工的に植栽されたものです。
キジョラン(鬼女蘭)
学 名 Marsdenia tomentosa Morr. et Decne.
科 名 ガガイモ科 
花 期 8月~11月
分 布 関東以西の本州、四国、九州、沖縄
大きさ 1-3m
生育場所 照葉樹林の林内や林縁など

<特徴>
 日当たりの良い原野に生えるつる性の多年草で、茎の下部は木質となります。葉には柄があって対生し、卵円形で大きく、基部は円脚か浅い心脚、全体としてはややハート形に近くなります。夏に葉脈に短い花柄を出し、淡黄白色の小花をつけます。

<名前の由来>
 その綿毛の白毛を鬼女の髪に見立てたことに由来します。

<備考>
 
有毒です。

<食餌植物としている蝶>
 アサギマダラ 

(2)春日井市でのアサギマダラ

①アサギマダラのデータ

アサギマダラ(浅葱斑)
学 名 Parantica sita
科 名 タテハチョウ科
亜科名 マダラチョウ亜科 
属 名 マダラチョウ族
属 名 アサギマダラ属
時 期 年2~3回、4月~10月
分 布 本州(関東以西)~沖縄
大きさ (前翅長)43-65mm
(開張)100mm前後
生育地 市街地から高山帯まで

<特徴>
 成虫は春から秋まで、市街地から高山帯までいろいろなところで見られるマダラチョウの仲間です。翅の裏側と表側は黒褐色の地に浅葱(アサギ)色の斑模様が見られますが、後翅の外縁は赤褐色になります。ほとんどはばたかず、ふわふわと舞っていますが、移動性が強く、長距離移動をする渡り蝶として知られています。幼虫は、ガガイモ科植物(キジョラン、イケマなど)を食べます。

<名前の由来>
 葱(ねぎ)の若芽に因んだ青み勝ちの浅い緑青色(アサギ)をした斑(マダラ)模様のある蝶という意味で命名されました。

<備考>
 季節型はありません。

 ②春日井市のアサギマダラの生息状況

 ほぼ市内全域で、春から秋まで見られる可能性がありますが、山地の方が頻度が高く、丘陵地や平地では稀です。市内でも東部丘陵でキジョラン等に産卵することが知られていますが、春に北方や標高の高いところに移動し、秋になると南方へ長距離移動する習性があります。しかし、その途中で平地へ立ち寄ることがあるので、その時に平地でも観察できる可能性があります。成虫は、ヒヨドリバナ、ヨツバヒヨドリなどの花を好み、地表でも吸水します。

③春日井市でのアサギマダラの生態写真

アサギマダラ♂(タテハチョウ科) 2019年10月10日午前、西尾町で撮影
アサギマダラ♂(タテハチョウ科) 2020年10月12日午前、外之原町で撮影
アサギマダラ♂(タテハチョウ科) 2020年10月24日昼、築水池周辺(廻間町)で撮影

(3)「築水の森」でのアサギマダラ幼虫の越冬観察記録

①2021年12月25日(土)午前

 「かすがい東部丘陵自然観察会」の例会に参加して、築水の森の野草園の近くのキジョランにアサギマダラの幼虫を発見しました。幼齢幼虫が5頭と中禮幼虫が1頭確認でき、晩秋にアサギマダラが産卵したものが、孵化したものと思われます。春日井市で、幼虫越冬できるかどうか、微妙な感じなので、今後は定期的に観察しながら、見守っていきたいと思いました。

②2022年1月22日(土)午前

 1月の寒さに堪えられなかったのか、取に食べられてしまったのか、アサギマダラの幼虫は、2頭だけに減ってしまっていました。寒いと食も進まないようで、生き残った幼虫もあまり成長していないように思われました。

 

③2022年2月26日(土)午前

 寒い日が続いているものの、アサギマダラの幼虫2頭は、しぶとく生き残っていました。しかし、食はほとんど進んでいないのか、ほとんど成長は見られませんでした。

④2022年3月9日(水)午前

 3月になりましたが、まだ寒い日が続いていますが、アサギマダラの幼虫2頭は、まだ生き残っていました。しかし、食はほとんど進んでいないのか、ほとんど成長は見られず、このまま終齢幼虫になって、蛹化できるのかどうか?引き続き見守っていきたいと思います。

⑤2022年3月26日(土)午前

アサギマダラの幼虫は、とうとう1頭だけになってしまいましたが、暖かくなってきて、成長が早まって来ていて、中齢幼虫に育ったようです。

⑥2022年3月30日(水)午後

天気は晴で、気温は20℃位、風力は2で、雲量は50%ほどで穏やかな日でした。アサギマダラの1頭だけ生き残った幼虫は、成長してきていて、元気にしているようです。

⑦2022年4月12日(火)午後

天気は快晴で、気温は25℃位、風力は1で、雲量は0%できれいに晴れ渡っていました。アサギマダラの1頭だけ生き残った幼虫は、さらに成長してきていて、終齢幼虫になったようです。

⑧2022年4月13日(水)午前

昨日に続いて、観察に来ましたが、アサギマダラの1頭だけ生き残った終齢幼虫は、活発に葉を食べているようで、蛹化が近づいてきているように思いました。

⑨2022年4月25日(月)午後

天気は快晴で、気温は27℃位、風力は2で、雲量は10%で、汗ばむような陽気となってきました。アサギマダラの1頭だけ生き残った幼虫は、とうとう蛹にまでなりました。

⑩2022年5月10日(火)午前

天気は晴で、気温は23℃位、風力は2で、雲量は50%で、穏やかな天気です。アサギマダラの1頭だけ生き残った幼虫は、蛹となって、成熟してきているようです。

⑪2022年5月14日(土)午前

アサギマダラは蛹になって、20日以上になってきていると思われ、そろそろ羽化が近づいてきていると考えられます。

⑫2022年5月22日(日)午前

天気は晴で、気温は25℃位、風力は2で、雲量は30%で、穏やかな天気です。アサギマダラの1頭だけ生き残った蛹は、羽化したようで、抜け殻となっていました。成虫となって、北方か山地の方へ旅立っていったものと思われます。尚、知人に聞いたところでは、すでに4.月19日には、抜け殻となっていたようです。

(4)アサギマダラ幼虫の越冬について 

 ①アサギマダラのライフサイクル

 越冬可能な地域で、幼虫で冬を越し、5月頃に第1化の成虫が羽化すると北方や山地・高地へ長距離移動し、そこで産卵・羽化します。世代交代し、10月頃に羽化した成虫は逆に南方へと長距離移動し、途中で低地のフジバカマやヒヨドリバナなどで吸蜜し、南方のカガイモ科植物の常緑のもの(キジョラン、ツルモウリンカ、サクラランなど)に産卵するとされています。


「フィールドガイド 日本のチョウ」より

②アサギマダラの越冬可能範囲

 春日井市は越冬できるかどうかの愛知県の北限になっています。しかし、春日井市東部の定光寺駅付近廃線跡「愛岐トンネル群」のキジョランにおいて、愛岐トンネル群保存再生委員会の方から、5月にアサギマダラが羽化したことが有ると聞いています。「築水の森」はそれより約4km北に位置しています。


「フィールドガイド 日本のチョウ」より

③「築水の森」でのアサギマダラの幼虫越冬・羽化

 愛知県春日井市廻間町の「築水の森」のキジョランには、以前にもアサギマダラが産卵し、孵化して幼虫にはなったものの、成長できずに羽化には至らなかったと聞いています。今回、1頭だけでも幼虫越冬・羽化に至ったのは、愛知県の北限での貴重な事例だと思われます。来年以降もアサギマダラが、産卵してくれて、幼虫越冬・羽化していけるかどうか、観察を続けていきたいと思っています。

<参考文献>

・「原色日本蝶類生態図鑑Ⅱ」保育社 1983年發行
・「フィールドガイド 日本のチョウ」誠文堂新光社 2012年発行
・「日本産蝶類標準図鑑」学習研究社 2006年発行 

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